日本政府は「大阪万博」が開催される2025年に向けて、クレジットカード決済を含むキャッシュレス決済サービスの普及・促進を展開しています。とりわけ近年はEC市場などの拡大にともない、クレジットカードで買い物をしたり、サブスクリプションサービスなどを利用したりする機会が増えました。もはやクレジットカード決済は、私たちの生活に欠かせないものとなりつつあります。
一方で日本は、先進国の中ではクレジットカード決済の普及率が低いことで知られます。クレジットカード決済の仕組みが正しく周知されていない、情報漏えいや不正利用のリスクを警戒するユーザー層が一定数存在するなど、さまざまな理由が考えられます。
そこで今回は、クレジットカード決済の特徴や仕組み、メリット・デメリットについて徹底解説します。クレジットカードにおける正しい知識を身につけ、生活をもっと便利に、快適にしましょう。
《TOPICS》
■クレジットカード決済の基礎知識
■クレジットカード決済の仕組み
■クレジットカード決済におけるメリット
■クレジットカード決済におけるデメリット
■クレジットカード決済の基礎知識
ここでは、クレジットカード決済の特徴や仕組み、利用方法といった基礎知識を解説します。これから新規入会を検討している方、将来的に発行したい方のお役に立てると幸いです。
●クレジットカード決済とは
クレジットカード決済とは、クレジットカードを用いた後払い方式の一種です。一時的に商品の購入代金やサービスの利用代金をクレジットカード会社が立て替え、利用者は後日、そのお金を支払います。近年浸透が進むキャッシュレス決済サービスの先駆けであり、非常に高い利用利率を誇る決済手段です。
日本政府は、クレジットカード決済を含めたキャッシュレス決済の利用比率を、2025年までに40%へ到達させるKPI(重要行政評価目標)を掲げています。設定理由としては、先進国におけるキャッシュレス決済の平均的な利用比率が、おおよそ40%であるためと考えられています。
経済産業省が公表した「キャッシュレスの現状及び意義」によると、2016年時点の日本のキャッシュレス利用比率は19.9%でした。主要各国の40~60%という数値に比べると、先進国の中では、キャッシュレス決済の普及に後れを取っているといえます。
とはいえ、キャッシュレス決済の普及率は、年々増加傾向にあるのも事実です。「一般社団法人キャッシュレス推進協議会」の「キャッシュレス・ロードマップ 2021」によると、キャッシュレス決済の利用比率は、2019年に26.8%まで増加したことがわかりました。政府推進のポイント事業などがあり、今後も堅調に推移していくと予想されます。
クレジットカードが使えるのは、実店舗だけではありません。インターネット通販やオンラインサービスの利用代金を支払う際も、クレジットカードが重宝します。総務省が公表した「令和3年 情報通信白書」によると、オンラインショッピングにおけるクレジットカード決済比率は、2020年時点で79.8%でした。約8割のユーザーが、オンラインショッピングにクレジットカードを利用していることがわかります。●クレジットカード決済を行うには
クレジットカード決済は、カード利用者の「信用情報」をもとに成立する取引です。カードの発行には審査があるものの、審査基準はカード会社ごとに異なるほか、その詳細は明かされていません。一般的には、申込者の社会的信用や経済状況、返済能力の観点から審査するとされます。
いずれにしても、クレジットカード決済を利用するには、カード会社の審査をクリアする必要があります。問題なく審査に通れば、新しいクレジットカードが郵送で届く仕組みです。カードが届いたその日から、実店舗やオンラインショップで使えるようになります。■クレジットカード決済の仕組み
クレジットカード決済の仕組みは、「3者間決済」または「4者間決済」によって異なります。ここでは、各決済における仕組みと流れを図解でご説明します。
●3者間の決済の場合
クレジットカード決済における3者間決済とは、「決済代行会社を利用しない取引」を指します。実際のやりとりは、契約者であるであるクレジットカード会員(購入者)・店舗などのブランド加盟店(事業者)、クレジットカード会社の3者で行われるため、3者間決済と呼ばれます。
前提として、クレジットカード決済は後払い方式であるため、即時に金銭のやりとりは発生しません。まず、クレジットカード会員がカード決済で商品やサービスを購入すると、その利用情報がクレジットカード会社に届きます。クレジットカード会社は、ブランド加盟店における「売上代金」を一時的に立て替えます。ただ、利用直後に売上処理が行われるわけではありません。各カード会社の入金サイクルにしたがい、「加盟店手数料」を差し引いてから、売上代金を支払います。なお、加盟店手数料を消費者に負担させること自体は、法律で禁止されています。
次に、クレジットカード会社は、カード会員の指定口座から利用額を引き落とします。引き落とし日はカード会社によるものの、毎月15日や25日、月末日が主流です。例えば、締め日が15日で支払いが翌月25日の場合、16日から翌月15日までの利用金額を、翌々月25日に支払うこととなります。 クレジットカード会員は、利用代金の引き落とし日までに現金を入金しておかなければなりません。問題なく引き落としが完了したら、3者間決済が成立したと見なします。請求が届いたら、期日までに支払えるよう準備しておきましょう。
<関連記事>クレジットカードの引き落としについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
●決済代行会社を利用した4者間の決済の場合
4社間決済の場合、上記3者に加えて決済代行会社・決済代行サービスが取引に介入します。クレジットカード会員がカード加盟店で商品やサービスを購入する流れは同じです。3者間決済と違うのは、ブランド加盟店がクレジットカード会社ではなく、決済代行会社から代金立替を受けること。決済代行手数料を差し引いた売上が、ブランド加盟店に支払われる仕組みです。
決済代行会社は、ブランド加盟店とクレジットカードの間を取り持つ仲介役です。消費者には知られていませんが、ブランド加盟店である店舗側にとって、クレジットカード決済の導入ハードルは高いとされています。複雑な手続きに加え、クレジットカード決済を可能にするシステムを構築しなければなりません。
そこで重宝されるのが、決済代行会社です。ブランド加盟店は、決済代行会社のサービスを利用するだけで、クレジットカード決済導入に欠かせないシステム構築、各種手続きが不要となります。とりわけクレジットカード決済の利用比率が高いECサイトやオンラインサービスにおいて、決済代行会社は不可欠です。
なお、決済代行会社とクレジットカード会社の間では、「包括加盟店代理契約」が締結されています。包括加盟店代理契約とは、クレジットカード会員の初期審査のみカード会社が行い、与信管理はカード会社と決済代行会社の2者で行う契約のこと。消費者に直接関係するものではありませんが、頭の片隅に置いておくと良いでしょう。
クレジットカードの利用代金の支払い方法は、3者間決済と変わりません。3者間と4者間の明確な違いは、ブランド加盟店とクレジットカード会社の間に決済代行会社が介入するか否かとなります。■ クレジットカード決済におけるメリット
クレジットカード決済には、現金の持ち歩きが不要になったり、支払い方法を柔軟に選択できたりする利点があります。ここでは、クレジットカード決済のメリットを4つのポイントにわけてご紹介します。
●現金の持ち歩きが不要になる
クレジットカード決済に対応する加盟店であれば、現金不要で買い物やサービス の利用が可能になります。高価な買い物をしたり、手持ちが不安だったりする際に、クレジットカードがあると重宝するでしょう。常に現金を持ち歩く必要がなくなるメリットがあります。
また、現金払いに比べると、会計が簡単でスピーディーです。カード1枚で支払いが完了するため、財布にあるお札や小銭を探す手間を省けます。また、クレジットカードとキャッシュレス決済サービスを連携させることで、プラスチックカードですら持ち歩かなくて済みます。キャッシュレス決済対応店舗に限られるものの、スマートフォンさえあれば代金を支払えるようになるのです。●複数の支払い方法が選べる
クレジットカード決済では通常、「一括払い」「分割払い」「リボ払い(リボルビング払い)」「ボーナス払い(ボーナス一括払い、ボーナス2回払い)」といった複数の支払い方法が用意されています。一括払いが原則の現金に比べ、支払い方法を柔軟に選択できるのがメリットです。
例えば、高価な買い物は分割払いにすることで、経済的負担が軽くなります。10万円の品を一括購入するよりも、「5万円×2回(2カ月 )」にわけて返済したほうが、1カ月 あたりの負担が軽減されるわけです。クレジットカードの分割払いは、与信枠における「割賦利用可能枠」の対象です。原則、2回までは分割手数料がかかりません。3回以上の分割から利率に応じて分割手数料がかかります。
このほか、毎月の支払額を一律するリボ払いや、ボーナスシーズンにまとめて引き落とされるボーナス払いなどがあります。それぞれ利用金額に応じて向き・不向きがあるため、特徴や仕組みを正しく理解し、使い分けることが重要です。
<関連記事>クレジットカードの支払い方法について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
●ポイントが還元される
クレジットカードには、買い物やサービス利用、景品との交換に使えるポイントプログラムがあります。利用代金に応じてポイント還元を受けられるため、使えば使うほどお得です。ただし、クレジットカードによっては獲得ポイントに上限を設けている場合があるため、還元条件などを随時確認してください
なお、ポイントの基本還元率はクレジットカードごとに異なります。基本還元率は0.3%前後が多い傾向にあり、1%を超えるものは高還元率とされます。そのため、メインカードを筆頭に、普段使いするクレジットカードは、基本還元率1%以上のものを選ぶのがおすすめです。
<関連記事>クレジットカードのメリットについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
●特典や割引サービスを利用できる
クレジットカードの特徴として、国内外の旅行傷害保険やショッピング保険の自動付帯が挙げられます。適用範囲や補償内容、付帯サービスの種類はカードによるものの、保険系サービスの自動付帯はいざという時に重宝します。また、会員限定の特典や割引サービスを受けられるのもメリットです。
身近な例として、大手石油販売業者が発行する、ガソリンスタンド特化型の流通系クレジットカードがあります。指定のガソリンスタンドでクレジットカード決済を選ぶと、会員価格で給油できるお得なカードです。もちろん、通常のクレジットカードの機能を備えているため、普段の買い物やサービス利用に使えます。
このほか、定期的にお得なクーポンを発行するクレジットカードがあります。サービス内容や特典は各カードで異なるため、ポイント還元率とあわせてチェックしたい項目のひとつです。クレジットカード決済におけるデメリット
利便性を中心としたメリットに対し、看過できないデメリットもあります。ここでは、クレジットカード決済における3つのデメリットを解説します。
●使い過ぎてしまう可能性がある
クレジットカードは現金不要で買い物やサービス利用ができるため、人によっては使い過ぎる可能性があります。お財布の紐が緩かったり、セルフコントロールが苦手だったりする人にとっては、大きなデメリットとなるでしょう。一方で、クレジットカードには、使い過ぎ防止につながるいくつかの機能が用意されています。
例えば、カード利用のリアルタイム通知機能です。クレジットカードで買い物などをした際、利用通知をメールやチャットアプリで通知します。さらにWEB明細などをチェックし、小まめに利用状況を確認することをおすすめします。クレジットカードはあくまでも、利用代金をカード会社に建て替えてもらうサービスに過ぎません。引き落とし日に現金を準備できるよう、利用・支払い計画をしっかりと立てることが重要です。
<関連記事>クレジットカードの引き落としについて、詳しくはこちらをご覧ください。
●使い方によっては手数料が発生する
高額商品などの分割払いを検討している場合、代金とは別で手数料が発生します。代表的なのが、3回以上のショッピング分割払いを選択したときです。先述した通り、分割払いは2回まで無料、3回以上は利率に応じた分割手数料が発生します。利率は分割回数に比例するため、回数が多ければ多いほど、手数料がかさむ仕組みです。
また、支払期間が長期化しやすいリボ払いにおいても注意が必要です。クレジットカードの種類によっては、支払い方法が自動的にリボ払いに設定されている場合があります。適切な支払い方法が選択されているか、契約内容や利用明細を小まめに確認することが大切です。
<関連記事>クレジットカードの利息について、詳しくはこちらをご覧ください。
●カード情報の漏えいリスクがある
クレジットカードの保有デメリットに、不正利用や個人情報などの情報漏えいリスクが挙げられます。不正利用については、大きくわけて2つの要因があるとされます。
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1.カード情報の流出・漏えい
2.カード本体の盗難・紛失
ネットショップなどでオンラインショッピングをする場合、クレジットカード情報の入力で決済可能です。ただ、ECサイトそのものがフィッシング詐欺目的の偽造サイトである可能性は否定できません。商品は届かず、単にクレジットカード情報だけ抜き取られます。これをカード情報の流出・漏えいといいます。ECサイト利用時は、可能な限りセキュアな決済環境を構築しているサイトを選ぶようにしてください。
もうひとつが、プラスチックカード本体を盗まれたり、紛失したりした場合です。車上荒らしやスリなどでカードを盗まれ、セキュリティコードなどを解析された上で、不正利用される可能性があります。いずれもクレジットカード会社に連絡し、早急にカード利用を停止しましょう。
クレジットカードの引き落としの仕組みについてはこちらの記事をご参照ください。