クレジットカードの与信枠、途上与信、与信確保(オーソリ)とは?

公開日2021.09.01最終更新日 2024.12.03

クレジットカードについて調べていると、「与信」や「与信枠」という言葉を目にします。与信は「信用の供与(きょうよ)」を表し、主に金融・経済領域で使われる専門用語です。馴染みのない言葉ですが、これからクレジットカードを発行するなら、具体的な意味や使用されるシーンを理解しておくのがおすすめです。

今回は、クレジットカードにおける与信の意味や、カード会社が行っている「与信管理」や「与信確保」についてご紹介します。

《TOPICS》
■クレジットカードの与信枠の基礎知識
■クレジットカードの途上与信の基礎知識
■クレジットカードの与信確保(オーソリ)の基礎知識

■クレジットカードの与信枠の基礎知識

クレジットカードをはじめ、金融系の話題で使用される「与信」という言葉。ここでは、与信の意味や定義、クレジットカードにおける与信枠の基礎知識を解説します。


●そもそも与信とは?

与信とは、クレジットカード利用を含めた商取引において、契約相手を信用し、商品代金回収前に「物品などを渡す・与える」ことを指します。カード会社は、契約者・利用者をさまざまな観点から審査し、個々に与信枠を提供します。

ここで重要となるのが、「与信管理」です。与信管理とは、カード会社が取引相手(利用者)に対して行うリスクマネジメントの一種です。クレジットカードは後払いを前提とした決済システムですが、利用者が口座引き落とし当日に、必ずキャッシュを用意しているとは限りません。場合によっては回収が遅れたり、取引相手が自己破産していたりする可能性もあります。これを会計用語で「貸倒損失」と呼びます。

クレジットカード会社がカード発行時に審査を行うのは、与信管理を行い、貸倒損失を防ぐのが目的です。具体的には、申請者の年収や勤続年数、勤務先の企業規模をチェックし、契約審査および与信枠の設定を行います。


●与信枠の意味

与信枠とは、クレジットカードにおける「利用限度額」「利用可能額」とほぼ同義です。その金額は、申請者の信用力に応じて決めるのが一般的です。ただし、具体例な要件や審査基準は、カード会社ごとに異なります。


●与信枠の種類

利用限度額を意味する与信枠は、以下の3種類に振り分けられます。

・ショッピング枠(一括払い)
「ショッピング枠(一括払い)」は、商品・サービスの購入代金に充てられる利用可能枠です。「全額一括払い」が前提の与信枠で、分割払いやリボ払いとは別枠になります。カード会社によるものの、支払い可能見込み額の90%以内を「ショッピング枠(一括払い)」および「ショッピング枠(割賦払い)」に設定するのが一般的です。支払い可能見込み額とは、申請者が1年間、無理のない範囲で支払えるクレジットカード代金のことを指します。

・ショッピング枠(割賦払い)
「ショッピング枠(割賦払い)」は、商品・サービスの購入代金を分割払い・リボ払いする際に利用する与信枠です。一般的には、「ショッピング枠(一括)」よりも少なく設定されます。混同されることも多いですが、「ショッピング枠(割賦払い)」は独立した与信枠ではありません。あくまでも「ショッピング枠(一括)」の一部のため、割賦払いの使いすぎに注意しましょう。

・キャッシング枠
キャッシング枠とは、クレジットカードを用いた現金の借り入れ(カードキャッシング)をするための利用限度額です。上記2種類のショッピング枠とは別枠で、「貸金業法」における「総量規制」にもとづき、年収の3分の1までと決められています。所有しているすべてのカードのキャッシング枠が対象となるため、カードを多く持つ方ほど、1枚あたりのキャッシング枠は少なくなります。


●与信枠が決まるポイント

以下、クレジットの与信枠に影響するポイントをまとめました。カード会社は審査時、申請情報や信用情報機関のクレジットヒストリーなどを確認しながら、与信枠を決める傾向にあります。

*職業:高収入の医者・弁護士、収入が安定する公務員は与信枠が増えやすい
*勤務形態:正社員は与信枠が増える傾向にある
*勤務先の会社規模:中小企業に比べ、大企業勤務者は与信枠が増える傾向にある
*勤続年数:勤続年数をもとに収入の安定性を評価する

この他、年齢や性別、既婚・未婚、同居家族の有無など、さまざまな項目を数値化(スコアリング)し、最終的なスコアをもとに、与信枠を決定します。カード会社は「収入の安定性」を重視するため、単に年収が高いだけでは、与信枠は大きくなりません。



■クレジットカードの途上与信の基礎知識

クレジットカードの与信枠は、利用状況に応じて大きくなったり、逆に小さくなったりします。ここでは、クレジットカードにおける「途上与信」の基礎知識を解説します。


●途上与信とは?

途上与信とは、クレジットカード発行後に一定スパンで行われる「途上与信審査」のことです。実施頻度はカード会社により異なりますが、3~6ヶ月に一度が目安です。

途上与信では、契約者の利用状況・利用履歴を確認し、カード発行時と同じくスコアリングしていきます。発行当時よりもスコアが良ければ与信枠を大きくし、逆に悪化していれば小さくします。支払い遅延や滞納など、金融事故を起こしている場合は、利用停止処分を受けることもあるようです。


●スコアリングのポイント

途上与信におけるスコアリングでは、重要な項目が3つあります。

*利用状況・利用履歴:返済遅延や延滞がないか
*借り入れ状況:カードキャッシングを含め、他社から現金を借り入れすぎていないか
*利用期間の長さ:支払い状況は安定しているか

基本的には、カード発行時に行われるスコアリングと変わりません。発行後の利用状況・利用履歴が良好であり、利用期間が長いほど高い評価につながります。また、カード会社は、他社での借り入れ状況や返済履歴を信用情報機関に照会できるため、別のカードの滞納が原因で利用停止になることもあります。



■クレジットカードの与信確保(オーソリ)の基礎知識

ここでは、クレジットカードの決済処理である「与信確保(オーソリ)」の基礎知識について、簡単にご説明します。


●与信確保(オーソリ)とは?

与信確保とは、クレジットカード決済における不正利用防止、利用限度額超過を防止するための決済処理です。「Authorization(オーソリゼーション)」の略で、日本語では与信確保や信用承認、あるいは仮売上を指します。

与信確保は事業者とカード会社、双方が行う手続きです。事業者は、利用者が提示したクレジットカードそのものや、取引内容に問題がないか、カード会社に事前確認します。これを「オーソリ処理」とい、カード会社はその内容を「オーソリ結果」として通知します。

クレジットカードの有効性がわかったタイミングで、事業者は決済枠を予約。カード会社に対し、「売上依頼」を行います。その後、売掛金(商品・サービスの代金)がカード会社から振り込まれる仕組みです。


●与信確保(オーソリ)が行われる理由

与信確保は、盗難カードや偽造カードの利用防止を目的とします。通常、与信確保は決済のたびに行われるため、不正利用を検知したら取引を中断したり、カードを一時的に利用停止したりします。また、カード利用者が利用限度額に達していないか、有効期限切れのカードを使っていないかなど、店舗側が確認できるのも理由です。

上記2つを筆頭に、与信確保はさまざまな売買トラブルの回避に役立ちます。例えば、在庫が安定しない人気商品の予約販売などです。店舗側は、商品が入荷した場合のみ決済処理し、できなかった場合は注文をキャンセルできます。そもそも決済が確定しないため、カード利用者に返金しやすいのが特徴です。



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